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キープ ゴーイング シグナルの真実

近代的なトレーニングを考える際にとても重要なことの一つに、フィードバックという概念があります。特に状態の維持(マテ系)で「これで合っているのかな」と不安になる犬を励まし、安心感を与えるために、今していることが正しいか間違っているのかを知らせることがその目的です。
そしてこれまでそれで正しいという合図を私はキープ ゴーイング シグナルと呼んでいましたが、日本にお招きしたボブ・ベイリー氏の極めてプロフェッショナルな動物(すべての動物)トレーニングで、用いられるキープ ゴーイング シグナルの意味が、行動のナビゲーションにあることが分かりました。
つまり動物が動く際の道案内の信号という意味で用いられていたのです。
これは状態の維持で用いるフィードバックとはいささか目的が異なり、(こちらの)理論的に不都合が生じてしまいます。そこでフィードバックとして用いる際の用語を変更する必要を感じ、いろいろ考えたのですが、キープ ドゥーイング シグナル(KDS)と名づけてはどうだろうかと思っています。

プロが業務目的の動物をトレーニング、あるいはコントロールする際に用いるキープ ゴーイング シグナルと、私たちが犬にフィードバックとして用いるキープ ドゥーイング シグナルとは似て非なるもので、決して混同してはいけないのですが、同時に家庭犬のトレーニングであってはフィードバックはとても重要で、ぜひ広めていきたい事だから、分かりやすい用語がなくてはならないと思うのです。

キープ ドゥーイング シグナルは「そうそう、それで合ってるよ」という意味に用いますので、必ずしもそれが行動ではなく、状態であっても有効です。そしてそれは単なる二次強化子ではないので、報酬の約束とイコールでもありません。

業務目的の動物トレーニングでは飼い主との絆は全く不要です。そこには行動のルールしか存在しません。ですから誰がコントロールしても指示が的確であれば同じ反応を示すはずだし、そのようにトレーニングします。さらに言えば指示を出すのは人間である必要もなく、オートメーション化された機械であっても、あるいはその方がより確実な結果を得られるわけですね。
一方家庭犬のトレーニングでは絆(きずな)がとっても大切です。行動を教えるトレーニングが30%だとしたら絆づくりは70%の比率を占めるくらい重要なことだと思います。
この辺はよく感情論で語られてしまうのですが、科学的に考えれば「犬の動機をどこに持って来るか」という問題に過ぎないのではないでしょうか?
業務目的の動物トレーニングでは明確な報酬の提示があって動機はシンプルなのですが、家庭犬の場合はちょっと広義で曖昧な「危機回避本能」をベースとした動機づけを行うべきであり、それこそが「絆(きずな)」なのだと思います。

家庭犬においては「行動を教えるのは簡単、教えた行動をいつでもしてもらうのが難しい」と私は思いますが、その難しいところが絆による部分なんですね。

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たかが言葉、されど言葉

言葉は、使われ方と時の経過と共に、最初に意図して使われた意味と違う意味を持っていってしまいますよね。「進化する」なのか「退化する」なのか??生き物です。
言葉を生業の一部にしている私は言葉選びに慎重になります。耳になじんだ言葉を耳にすると、そこで伝えたい意味は違うことであっても、それまでのその人の経験から、新しい情報を新しい情報として受け入れることが難しくなり、経験に基づいた言葉の意味を当てはめてしまい、情報の受け入れが難しくなってしまうと思います。
こんなことからも造語は重要な意味がありますよね。
KDSもよいのでは?Affirmという確信するなどの意味がある言葉を使ってAffirming Signalとか?そのヤワラカ頭でいろいろ考えてみてください(笑)。

KDS

ふむふむ。
命名するときは慎重に考えないとですね。私は「じゃまいかの禁止」みたいなおやじギャグ系のネーミングがすきなんだけど・・・。
Affirmingってアファーミングって読むんですかい?

腑に落ちました

のいぱぱさん、ご無沙汰してます、こんにちは。
最近、アニマルプラネットを見ることができるようになって、ハリウッドのタレント動物の番組を見ているのですが、あまりにも多種の動物が利用されていて驚いています。しかし、教室で習った犬との関係とも違うようだし、どうなっているのだろうと思ったのですがこの記事でなるほどと思いました。でも、言うことをきいてもらえてしまうと、気をつけないとどんな動物相手でも絆と誤解しそうですね。人間はやっかいです。

アニマルプラネット

もしかして早くも地デジ対応?薄くて大きなテレビが脳裏に浮かびます。(笑)
絆ってヒトが一方的に、そして感情的に求めているものなのでしょうね。
でも、何人かのすぐれた科学者にお会いしましたが、みなさん科学を語りながらも本当はとてもヒューマンな、そしてロマンチックな方々でした。何よりもいくつになっても好奇心が旺盛なところが素敵でした。
感情は大切です。ただ科学と分けなければならないだけなんでしょうね。

ケーブルテレビのチューナーだけが地デジに対応になりました(笑)ブラウン管が壊れたら薄いのにしようという予定なのですが、ブラウン管はなかなか頑丈で、なかなか壊れません。うむー、日本の技術は侮りがたし。
感情が大切というのはおっしゃる通りですね。私は犬とのつきあい方を教えていただいてから、感情と想像力が人に与えられた社会性のためのツールなんだなあと実感しているところです。人間が動物の世話をするのも、その能力があるからこそだと思っています。でも、異文化コミュニケ-ションの際にはちょっと冷静になるほうが効率的なんでしょうね。ちょっと寂しいけど、それは犬の幸せをゴールにして補完することにして。

(笑)

そうですか。ひがみっぽくてすみません。最近「薄くて大きい」コンプレックスなもので・・・。
感情と理性の住み分けについては、よく医学に例えさせてもらっています。「人間愛がベースにあるお医者さんが人の体にメスを入れる。苦い薬を飲ませる・・・。たとえ自分の家族であっても、あるいはそれならなおさら努めて冷静にオペをする。そう思うんですが、私たちが愛犬と接する時もベースには深い愛があって、それで冷静に学習理論に基づいた反応をしてあげることが、結局お互いの幸せのためになるんですね」と話したりしています。そして人に話すことで自分を戒める・・。ここがポイントです。(笑)
プロフィール

のいぱぱ

Author:のいぱぱ
やっぱりサモエドが大好きです。
抜け毛がものすごくても、頑固でマイペースでも・・・。
運命の出会いで一緒に暮らすことになったルフトと、最新の科学的な理論をバックボーンに信頼関係を楽しく築いて行きたいと思います。

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