ハウスマナーは行動か?
家庭犬の「しつけ」についてです。
さて、行動か状態か、これは犬の学習効率を考える際に結構大きなテーマだと思っています。
そして私たちが家庭犬のハウスマナーにおいて求めている事柄が行動なのか状態なのか、私なりの考えをもう少しわかりやすく説明させていただきます。
まずオスワリ。
皆さんは行動としてのオスワリを求めていますか?
お尻が下がって行って地面に着く、その動きを求めていますか?
人はとかく犬に求めていることを漠然と考えがちですが、犬の立場からすればそれはたいていとてもわかりにくくて、しかも要求を人間の言葉で言われた日にはもはや理解しようとすることすらあきらめかねません。
もう少し犬の立場に立って、具体的に求めていることを伝えるようにしたいものです。
それでオスワリなんですが、これは最終的に何を求めているのでしょう?
「オスワリ」と言ったらどうしてほしいのでしょう?
A:座ってほしい
Q:では一瞬お尻がつけばいいの?
A:まさか。そのまま次の指示、あるいは解除の合図が出るまで座り続けてほしいんです。
つまりほとんどの人は「オスワリ」という言葉で犬に求めているのは座った姿勢を保つことなんですね。
するとこれは行動ではなく状態です。私たちが「きっこけ」と呼んでいる「きっかけ」「行動」「結果」の3つの箱に納められるオペラント学習ではないんですね。
・でも立っている犬なら座らなければその姿勢になれないんだから、行動を伴うでしょ。
そのとおりです。
そこで私が大事だと思っているのは、「犬は最終的な形を教えてあげれば、そこに至るプロセスを自分で考えることができる」という点なんです。
オスワリの姿勢を教えてあげれば、どうすればその姿勢になれるかは犬が自分で考えられるということなんです。
「後ろ足を折りたたんで徐々に腰を下ろし・・・・」なんて教えなくてもね。
犬は(動物は)これまで考えられていたよりずっと賢い、という話をよく聞きます。愛犬家ならだれでも納得できることだと思います。なのに何かを教えようとすると、たいてい手取り足取り・・・。
もっとゴールのイメージをしっかり持ち、それを犬に伝えてあげれば、そこに至る道のりは自分で考えられるのではないでしょうか?
ということで、おすわりやフセをそこに至るまでの行動ではなく、最終形の「状態」として教えてみてください。これまでよりずっと早く、そして正しく覚えてくれますよ。
・それでも行動としてしか教えられないものもあるのでは?
そうですね。でも突き詰めてみると驚くほど少ないような気がします。
たとえば「オイデ」。
これはまさに走ってくるのだから行動以外のなにものでもないでしょう?と思いがちですが、最終形はたいてい正面で座っていること。つまり状態です。
少しでも早くその状態に入るために犬が走ってきたとしても、それは勝手に自分で考える部分で、教える必要はないわけです。
時間制限のリミテッドホールドを用いれば、どんどん素早く来るようになると思います。
たとえばレトリーブ。
こんな複合動作でも、突き詰めればダンベルをくわえて正面で座っている状態になってほしいだけなんです。
それプラス別のメニューで「ダセ」と言ったらダンベルを手渡ししてくれること。
複合動作はよくバックチェイニングという、ゴールからスタートの行動に向けて逆順で教える手法が用いられますが、もしかしたらそんなことも不要で、とにかく最終形を古典的的(正確に古典的条件付けといえる自信がないので、あえて「的」を二つ付けています)に教えてしまえば、犬が自分で考え、その状態になるためには投げられたダンベルを取りに行って、くわえて戻り、くわえたままオスワリをして待つ、という一連の行動が必要だとわかるのではないでしょうか?実際ちょっとヒントを用いますが、その方がレトリーブはずっと楽に教えられます。
こんなにいろいろな行動を伴うレトリーブでさえ、教えるのは最終形の状態であって途中の行動ではないということになってしまいます。ここでもスピードアップはリミテッドホールドを用いたシェイピングで済むわけです。
ややこしいところでヒーリング。
これも横について歩くことですから、どう考えても行動、しかも継続する行動なんですが、教えたいのは4つの足の進め方ではなくて、人間との位置関係。そしてこれは動きではなく状態なんです。
行動の中の位置関係です。
その部分だけを古典的的にばっちり条件づけてしまうと、人がどんな動きをしようと、あるいは止まろうと、犬の顔は常に同じ場所にあるという、とてもありがたい学習をしてくれることになります。
逆にたとえばオペラント的に行動として教えたヒーリングは、しばしば「ヒール」と言いながら人が動かずにいると、犬だけ前に出てしまう結果を招きます。人と一緒にバックしようとしたら、まったく別メニューで、バックを教えなおさなければならなくなります。
では逆に、普通に使うキューの中で、行動でなくてはならないものってあるのでしょうか?
あります。
前進と後退です。
これは動きを強化しないと、すぐ途中で止まってしまうようになります。
よくあるトレーニングの失敗は、少しでも遠くまで行かせようとして限界にチャレンジし、毎回犬が止まったところで、クリッカーを鳴らしたり、褒めたり、ご褒美をあげたりという「強化」をしてしまうこと。
犬はすぐに場所、あるいはハンドラーとの位置関係で「状態」を学習してしまいます。「いつもこの辺でおやつがもらえる」という学習です。
前進や後退を教えたいとき、とっても大事なのが、「動いていることを強化する」ことなのです。
その際には毎回「マテ」で動きを止めるか、すぐに解除のキューを出しておくと、「マテ」と言われない限り動き続ける、つまり遠くまで行けるようになりやすくなります。(ただし報酬がハンドラーからしか出ないトレーニング法では、そもそもハンドラーから離れたがらなくなってしまいますが)
さて、まただらだらと書いてしまいました。
科学という名の情報にだまされることなく、むしろ科学的な考え方そのものを自分の中に取り入れることで、さまざまな常識の矛盾に気がついたり、新たな発見をできると信じつつ、これからもいろいろ考え、そして実践していきたいと思います。
さて、行動か状態か、これは犬の学習効率を考える際に結構大きなテーマだと思っています。
そして私たちが家庭犬のハウスマナーにおいて求めている事柄が行動なのか状態なのか、私なりの考えをもう少しわかりやすく説明させていただきます。
まずオスワリ。
皆さんは行動としてのオスワリを求めていますか?
お尻が下がって行って地面に着く、その動きを求めていますか?
人はとかく犬に求めていることを漠然と考えがちですが、犬の立場からすればそれはたいていとてもわかりにくくて、しかも要求を人間の言葉で言われた日にはもはや理解しようとすることすらあきらめかねません。
もう少し犬の立場に立って、具体的に求めていることを伝えるようにしたいものです。
それでオスワリなんですが、これは最終的に何を求めているのでしょう?
「オスワリ」と言ったらどうしてほしいのでしょう?
A:座ってほしい
Q:では一瞬お尻がつけばいいの?
A:まさか。そのまま次の指示、あるいは解除の合図が出るまで座り続けてほしいんです。
つまりほとんどの人は「オスワリ」という言葉で犬に求めているのは座った姿勢を保つことなんですね。
するとこれは行動ではなく状態です。私たちが「きっこけ」と呼んでいる「きっかけ」「行動」「結果」の3つの箱に納められるオペラント学習ではないんですね。
・でも立っている犬なら座らなければその姿勢になれないんだから、行動を伴うでしょ。
そのとおりです。
そこで私が大事だと思っているのは、「犬は最終的な形を教えてあげれば、そこに至るプロセスを自分で考えることができる」という点なんです。
オスワリの姿勢を教えてあげれば、どうすればその姿勢になれるかは犬が自分で考えられるということなんです。
「後ろ足を折りたたんで徐々に腰を下ろし・・・・」なんて教えなくてもね。
犬は(動物は)これまで考えられていたよりずっと賢い、という話をよく聞きます。愛犬家ならだれでも納得できることだと思います。なのに何かを教えようとすると、たいてい手取り足取り・・・。
もっとゴールのイメージをしっかり持ち、それを犬に伝えてあげれば、そこに至る道のりは自分で考えられるのではないでしょうか?
ということで、おすわりやフセをそこに至るまでの行動ではなく、最終形の「状態」として教えてみてください。これまでよりずっと早く、そして正しく覚えてくれますよ。
・それでも行動としてしか教えられないものもあるのでは?
そうですね。でも突き詰めてみると驚くほど少ないような気がします。
たとえば「オイデ」。
これはまさに走ってくるのだから行動以外のなにものでもないでしょう?と思いがちですが、最終形はたいてい正面で座っていること。つまり状態です。
少しでも早くその状態に入るために犬が走ってきたとしても、それは勝手に自分で考える部分で、教える必要はないわけです。
時間制限のリミテッドホールドを用いれば、どんどん素早く来るようになると思います。
たとえばレトリーブ。
こんな複合動作でも、突き詰めればダンベルをくわえて正面で座っている状態になってほしいだけなんです。
それプラス別のメニューで「ダセ」と言ったらダンベルを手渡ししてくれること。
複合動作はよくバックチェイニングという、ゴールからスタートの行動に向けて逆順で教える手法が用いられますが、もしかしたらそんなことも不要で、とにかく最終形を古典的的(正確に古典的条件付けといえる自信がないので、あえて「的」を二つ付けています)に教えてしまえば、犬が自分で考え、その状態になるためには投げられたダンベルを取りに行って、くわえて戻り、くわえたままオスワリをして待つ、という一連の行動が必要だとわかるのではないでしょうか?実際ちょっとヒントを用いますが、その方がレトリーブはずっと楽に教えられます。
こんなにいろいろな行動を伴うレトリーブでさえ、教えるのは最終形の状態であって途中の行動ではないということになってしまいます。ここでもスピードアップはリミテッドホールドを用いたシェイピングで済むわけです。
ややこしいところでヒーリング。
これも横について歩くことですから、どう考えても行動、しかも継続する行動なんですが、教えたいのは4つの足の進め方ではなくて、人間との位置関係。そしてこれは動きではなく状態なんです。
行動の中の位置関係です。
その部分だけを古典的的にばっちり条件づけてしまうと、人がどんな動きをしようと、あるいは止まろうと、犬の顔は常に同じ場所にあるという、とてもありがたい学習をしてくれることになります。
逆にたとえばオペラント的に行動として教えたヒーリングは、しばしば「ヒール」と言いながら人が動かずにいると、犬だけ前に出てしまう結果を招きます。人と一緒にバックしようとしたら、まったく別メニューで、バックを教えなおさなければならなくなります。
では逆に、普通に使うキューの中で、行動でなくてはならないものってあるのでしょうか?
あります。
前進と後退です。
これは動きを強化しないと、すぐ途中で止まってしまうようになります。
よくあるトレーニングの失敗は、少しでも遠くまで行かせようとして限界にチャレンジし、毎回犬が止まったところで、クリッカーを鳴らしたり、褒めたり、ご褒美をあげたりという「強化」をしてしまうこと。
犬はすぐに場所、あるいはハンドラーとの位置関係で「状態」を学習してしまいます。「いつもこの辺でおやつがもらえる」という学習です。
前進や後退を教えたいとき、とっても大事なのが、「動いていることを強化する」ことなのです。
その際には毎回「マテ」で動きを止めるか、すぐに解除のキューを出しておくと、「マテ」と言われない限り動き続ける、つまり遠くまで行けるようになりやすくなります。(ただし報酬がハンドラーからしか出ないトレーニング法では、そもそもハンドラーから離れたがらなくなってしまいますが)
さて、まただらだらと書いてしまいました。
科学という名の情報にだまされることなく、むしろ科学的な考え方そのものを自分の中に取り入れることで、さまざまな常識の矛盾に気がついたり、新たな発見をできると信じつつ、これからもいろいろ考え、そして実践していきたいと思います。
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腑に落ちます
しっかり腑に落ちた感じがします。
ヒールポジションも、痛感しています。
これからの大きな変化を感じずには
いられないって感じです。
ヒールポジションも、痛感しています。
これからの大きな変化を感じずには
いられないって感じです。
実は
実は競技会が近付いて来て焦っている自分を戒めるために書きました。
基本を忘れないようにしないとです。
ルフトはいつまでも競技を楽しめるように育てたいです。
基本を忘れないようにしないとです。
ルフトはいつまでも競技を楽しめるように育てたいです。