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許可と解放

つくづく犬が人の言っていることを理解するのは大変だなぁと思います。
それは私たちがつい「人の目線で」犬をとらえてしまうからであり、またどうしても「言語に頼る動物」だからだと思います。

トレーニングでとても大事なことに「許可と解放」があります。これも実にあいまいで、これまで私もあまり上手に説明できない事柄でした。

でもここをクリアにしなければ犬は必ず混乱します。
あいまいな態度を取る犬が多いのは私たちにも責任があるのです。

よく「OK]あるいは「よし」という言葉が使われます。
器の前でオスワリさせている犬に「OK」または「よし」と声をかける人は多いですね。
これは「許可」です。

クレートに入れてある犬を出すときも「OK]あるいは「よし」という人、よく見かけます。
これは「解放」の意味で使われていることが多いように思います。もう自由にしていいよという意味です。何かの束縛を与えていて、そこから解き放つ時に用いられる言葉です。

そこで疑問が浮かびます。
「あれ?クレートトレーニングとは、そこにいることを好きにさせるトレーニングではなかったのか?」
だとしたらクレートにいることが好きな犬に解放の合図を出しても、そのまま中に残るのではないでしょうか?
答えはYESです。
正しく解放の合図を理解している犬なら、そしてクレートが好きな犬なら出てきません。
でも人は「OK」と言ったら出てくるものだと信じ込んでいます。その背景にはクレートとは犬を閉じ込めるものという、罪悪感にも似た固定観念があるからでしょう。

ではどうすればよいか。
答えは解放ではなく、「オイデ」と言って呼ぶか、「アウト」という新たなキューをつけて外に出すべきなんです。それだけで犬の混乱が一つ減ります。

もうひとつ。
オスワリをさせる→褒める→おやつをあげる→・・・そこで「OK]あるいは「よし」で開放する・・・・。
これはどうでしょう?
犬はオスワリと言われて座るとご褒美がもらえるわけです。したがって強要されているのではなく、したくてやっている状態です。
そこで「OK]あるいは「よし」と言われたら、できればそのまま座っていたいのではないでしょうか。そして再びおやつをもらいたいのではないでしょうか。

もしも「OK]あるいは「よし」を許可として用いるのなら、この場合、
オスワリをさせる→褒める→おやつを見せる→「OK]あるいは「よし」でオスワリを崩し、食べることを許可する・・・・。
これが正しいんです。

「解放」は得てしておやつが出なくなる合図となります。すると、直前の行動には負の弱化の原理が働きます。つまりこういう「解放」はノーリウォードマーカーです。犬にとって悲しい知らせなんです。
「もう自由にしてやるよ」という意味でしょうが、報酬をベースとしたモチベーショナルトレーニングでは犬を束縛しているわけではないので、犬が自由を求めるケースもあまりないと思います。

どうしても「解放」という言葉には惑わされやすいので、「終了」という考え方で「おしまい」という言葉を使った方が人も犬も誤解しにくいと思います。
「おしまい」にはうれしいニュアンスも悲しいニュアンスも入れません。ただ単に終了です。

私たちは報酬ベースのトレーニングは、それがクリッカ-トレーニングであってもそうでなくても、終わりを告げられるのは犬にとって悲しいことだという事実を忘れないようにしなければなりません。
だから「解放」というのは強制訓練でない限り、あまり使うことのない概念であると考えましょう。

となると「OK」または「よし」はあくまでも許可の合図であり、だとしたら報酬の後に出すものではなく、報酬の前に出すべきであることが明白になります。

そして「OK」または「よし」は、「今欲しいものを自分で手に入れて良い」という意味であることにも注意を払ってください。
時には目の前のおやつより、隣の犬と遊びたかったり、地面のにおいを嗅ぎたかったりします。
そこで正しく「OK」または「よし」の意味を理解している犬なら、今自分が最も欲しいものを手に入れるはずなんです。決して「OK」または「よし」はこのおやつを食べなさい、という意味ではないんですね。

犬の欲しがる報酬を真剣に考えると、それがとても奥深いことに気がつかされます。欲しいものはイコール本能に基づいているから、食べ物だけではないことがその理由です。
ときには安心感が大きなごほうびなんです。
そこで私たちは「今、犬が何を望んでいるのか」を探る必要が出てきます。
おなかが空いているときに撫でられてもあまりうれしくありません。
不安でいっぱいのときは食べ物なんて欲しくありません。欲しいのは安心感なんです。

でも大丈夫。もし犬に正しく「OK」または「よし」という言葉を許可として伝えてあれば、そのとき最も効果的なごほうび(つまり犬が最も欲しいと思っているもの)は、犬が行動で教えてくれますから。


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No title

そうですよね!
ありがとうございます。
今いちど、こうして書いていただけると、頭がクリアになりました!*^^*

すぐ、生徒さんに「解放のキュー」と言ってしまいがちなので、
「終了のキュー」もしくは、「許可のキュー」というように、
時と場合によって、いいかえるようにしなくちゃ。。。と反省です。

ラナグーまま

そこまでしなくても、という意見が世間の趨勢だと思いますが、犬たちを見ているとやはり混乱し、適当に折り合いをつけているように見えてなりません。

だから許可と終了を使い分けてあげた方が犬の負担は減ると思うんです。
プロフィール

のいぱぱ

Author:のいぱぱ
やっぱりサモエドが大好きです。
抜け毛がものすごくても、頑固でマイペースでも・・・。
運命の出会いで一緒に暮らすことになったルフトと、最新の科学的な理論をバックボーンに信頼関係を楽しく築いて行きたいと思います。

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