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内的報酬を操れるのが達人

リウォードベースドモチベーショナルトレーニング、つまり報酬をもとにした動機付けによるトレーニング法では、その成否に「報酬」が極めて重要なカギを握っています。

いわゆる「ごほうび」です。

ごほうび論で本が書けるほど、奥が深く重要なのですが、なかでも人間が提供できる「外的報酬」に対して、犬が自ら得る「内的報酬」は目に見えるものでもなく、極めて扱いが難しい「ごほうび」と言えるでしょう。

人が気軽に出したり引っ込めたりもできない「内的報酬」ですが、その実態はヘロインの6倍も7倍も強力であるといわれている脳内麻薬物質です。

こういった内的報酬がなぜ出るのか、いつ出るのか、どのくらい出るのか・・・、それを知らなければモチベーショナルトレーニングはすぐに壁にぶち当たってしまうでしょう。
どんなにおいしい食べ物でも脳内麻薬には勝てないからです。

内的報酬は主にモーターパターンとよばれる「いわゆる本能に根ざした行動」に対して出るものだと思います。
ですから目的を持って繁殖された犬たちは、ある特定の行動に対してこの内的報酬が多めに出るということになります。

動くものを追いかける犬種、すぐに吠える犬種、良く咬みつく犬種・・・。
誰に命令されたのでもなく、それをすることで誰かから外的報酬を得られるわけでもないのに(困った)行動を繰り返す犬・・・。

そこには生命のメカニズムとして内的報酬が出ているのです。

内的報酬に支えられたモーターパターンは叱っても止められません。それがその犬にとっては生きていく行為に他ならないからです。
チーズもレバーもなかなか太刀打ちできません。
優先順序が違うのです。

ではどうすればいいのでしょう?
といっても私に思いつくのは、

1.犬の資源を100%管理する
2.内的報酬を外的報酬にすり替えるプログラムを実行する

この2点しかありません。

犬の資源を管理する、というのはケン・マッコートが良い飼い主の条件として端的に表したフレーズですが、これだけでも理解するのに結構な時間がかかるほど奥の深い事柄です。人道的な、束縛ではなく解放のための管理・・・・。真剣に考えないと答えが見つかりません。

そしてそれを具体的に活かしたトレーニングというと、ますます頭を使わなければなりません。
資源の管理は「許可」と「解放」をしっかり行うことがMustです。

そして内的報酬を外的報酬にすり替えるプログラム、これはリスクもあるのでブログでは書ききれませんが、ヒントとなるエピソードをご紹介します。
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アメリカの行動学者のお話です。
彼の自宅は閑静な住宅街にあり、前庭にはおおきなゴミ箱がいくつか置かれていました。
ある朝早く、アイスホッケーの練習に行く子供たちがホッケーのスティックでゴミ箱をガンガンたたきながら通り過ぎていきました。

そしてその行動は日課になり、毎朝毎朝ガンガン・・・。

学者はうるさくて寝ていることができません。
でもここで注意したら子どもたちはますますエキサイトしてたたくのをやめないだろうと、一計を案じました。

数日経った朝、待ち受けていた学者が子供たちに話しかけました。
「毎朝ありがとう。ちょうど起きなければいけない時間になかなか起きられなかったので、みんなの立てる音がとてもありがたかったんだ。お礼にこれからは毎朝ゴミ箱をたたいてくれたらみんなに1ドルずつあげよう。」「その代わりきっちり6時に鳴らして欲しいんだ。よろしく頼んだよ。」

子どもたちはいたずらでしていたのに、おこずかいもくれるとわかって大喜び。毎日正確に6時になるとゴミ箱をたたくようになりました。

しばらくしてそろそろよかろうと、学者が再び子供たちを集め話しかけます。
「これまでありがとう。もう6時に起きる必要がなくなったので明日からはお小遣いは出せないんだ。」
もうおこずかいをもらえないとわかった子供たちはちょっとがっかりし、以後ゴミ箱をたたくことをやめてしまいました。
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end

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非公開コメント

エピソード興味深いですね。
お手軽に試してみるには、方法が思いつきませんが。

a/nさん

良くあるエピソードも追加してみますね。

写真を撮ることが大好きだったAさん。何かのイベントがあれば出かけて行ってたくさん写真を撮っていた。
そしてついにプロカメラマンになり大活躍。
そんなAさんに古い友人が結婚式の写真を撮ってもらおうと頼んだらノーギャラでは嫌だと断られてしまった。

唄が好きでいつもカラオケ屋さんに行っていたBさん。
スカウトされてついにプロデビュー。
営業で全国を回って歌いまくる。
そんなBさんを友人がカラオケに誘ったが、営業で疲れていたBさんに断られてしまう。

リスクがあるので試すときは真剣にやらないとですが、エピソードに象徴されるりくつは結構役に立つと思います。

今、この内的報酬を外的報酬にすり替えるのをやってます。
外の音がする→吠える→呼び戻す→ごほうび です。
吠える前に呼び戻せるといいのですが、、、難しいですね。
ケンさんのお話。。。来年は聴けるように、帰国したいです。

ラナグーままさん

がんばってますね。
来日、又はタイでセミナーというのも素敵です。(笑)

キューのショートカット(たとえばまだ覚えていないハンドシグナルの後に慣れたヴァーバルキューを出し、行動の結果報酬が得られるのを繰り返せば、ハンドシグナルだけで行動しするようになる)を考えれば、
1.外の物音
2.吠える
3.呼び戻しのキュー
4.報酬
という流れのショートカットを起こせるとは思います。
でも2.の吠えるがショートカットされればいいのだけど、もしかしたら3.がショートカットされて、吠えてから戻ってくる、というパターンに入る可能性もあります。

その場合の大差飼うまで考えて、わざとショートカットが都合よく起きやすいように環境設定をするといいかもですね。
ポイントはタイミングとスピードでしょうか。

日々彼の内的報酬との格闘です
常同行動をとめて。転位行動をとめて、キューで外的報酬・・・
ケンのドッグランセッションでは私と生活した1年の中で一番すばらしい犬でした。
興奮も今までの半分ですし、攻撃的に吠えていましたが、真剣みがありません。
あれは攻撃とは言わないぐらいのものでした。

2日間絶食させてキャンプに臨みました。
他犬の前でチーズを外的報酬として受けとってくれました
この8月からできるようになっていましたが
練習のチャンスがほとんど無いのがつらいです


しかし2食抜くぐらいだと野外ではフード食べない
4食抜いてやっと山中湖の状態になります。

毎日トレーニングの機会があったとしても、彼の必要カロリーを摂取させることが出来ない
ジレンマがあります。

里親に引き取ってから3kgやせた (ARKには内緒)

でも山中湖ではやっと普通の犬のトレーニングらしきことが出来たことが進歩です
野外でフード食べた!  こんなことで喜ぶ私でした。

刺激に0・1秒で反射的に声をだす   これって遺伝?ですか?
休んでいても刺激で0・1秒で一声キャインです
10月に入り、普通の犬みたいにフードでトレーニングできつつあります。
外的報酬に切り替わりつつあります。(1年かかりました)
大きなテーマですがブログに書いていただくことで再確認できてうれしいです

グラままさん

生得的なもの、学習によるものにかかわらず、反射の行動は難しいですね。途中に「考える」という部分が無いから、反射に対抗できるのは反射だけかもしれません。
とっさにしてしまう行動に対して、それより早く反射的に反応する好ましい行動を植えつける。行動を教え、それを反復練習することで、強化の歴史で言う20回以上の成功パターンが必要なんでしょうね。

食事の管理は難しいですね。良質なたんぱく食を考えなくちゃです。
こういったノウハウは、思いっきり猫のトレーニングで役に立つのでぜひいろいろ研究してください。
期待しています。
プロフィール

のいぱぱ

Author:のいぱぱ
やっぱりサモエドが大好きです。
抜け毛がものすごくても、頑固でマイペースでも・・・。
運命の出会いで一緒に暮らすことになったルフトと、最新の科学的な理論をバックボーンに信頼関係を楽しく築いて行きたいと思います。

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