新しい学習は短時間で、反復練習は長時間で
犬のトレーニングを科学的に突き詰めていくと、いかにこれまでのトレーニングが「汗と根性と涙」に依存していたか思い知らされます。
ノイと競技会に出ていたころは、モチベーショナルトレーニングといってもかなり「汗と根性と涙」でした。
疲れて思考力のなくなったノイに強力なごほうびをちらつかせ、毎日3時間くらい練習していたと思います。
ずいぶん効率の悪いトレーニングをしていました。それだけノイにも負担をかけていました。
せっかくだからもっと効率のよい科学的なトレーニングを考えてみましょう。

ではどんなトレーニングが科学的なのでしょうか?
もちろん一言では言いきれませんが、今日は脳の仕組みを踏まえた提案をさせていただきます。
まず新しい行動については、短時間集中で記憶のメカニズムを意識した教え方をします。
脳細胞は筋肉の6~7倍カロリーを消費し、犬はすぐに疲れてしまいますから、やる気があっても、体力があふれていても、新しいことを教えるには短時間集中であることがとても大事です。
この時のポイントは
1.失敗を経験させないこと
記憶の中に成功のイメージしか残さないためです。
2.時間をタイマーでちゃんと管理すること
人間は管理されないとつい長くやってしまうからです。
せいぜい5分で休憩を入れましょう。
休憩中に行動の記憶が整理されるように、しっかり休ませます。
3.一つの目安として失敗がなく3回連続してできるようになったら学習が始まっています
ただし失敗が1回入ればそこから20回成功を続けないと失敗の記憶が打ち消せません。
4.もちろん行動の上にキューまで乗せた状態です
最初は行動、そして連続して成功するようになったら割とすぐにキューを乗せます。
5.行動の般化はこの段階で行ってはいけません
まず行動そのものを覚えるのが先決だからです。
6.報酬をしっかり与えます
魅力のある報酬、特に食べ物を与えます。引き上げを考えてはいけません。ランダムなんてもってのほかです。
7.エピソード記憶を意識してください
印象的な事柄とセットだと学習はとても効率的になります。

さて、これで行動を覚えました。
これはどんな状態かというと、
・キューを聞いたらそれが何を意味するかを理解し行動に移す
という感じだと思います。
つまり言われたことを考えて正しく、かつ自分にメリットが発生する行動を実行している段階です。
これ、自動車教習所で習う「目で判断してからブレーキを踏み、実際に止まるまでの空走距離」で説明されているように、キューから実行までにかなりの時間を要します。
途中に思考回路が入っているからです。報酬への期待も伴います。
さて、そこからのトレーニングは、新しいことを教えるプログラムとは考え方が全く異なります。
一言でいえば思考回路をバイパスし、キューを聞いたら無意識に反応する、いわゆるマッスルメモリー(筋肉記憶)に教え込むプロセスになるのです。
反射の領域に行動を移行させます。
これは思考回路をショートカットするのでキューを聞いたら自動的に体が動いてしまう状態です。迷いも出にくくなります。キューから行動までの「空走時間」も大幅に短くなります。
報酬への期待は後回しになります。
その時のポイントは、
1.ズバリ、反復練習です
環境を整え、失敗せずに繰り返し繰り返し行います。
2.一番落ち着いてできる慣れた場所で行います
単に覚えたての行動を無意識の反射にしてしまうプロセスなので、余計な刺激が無いほどいいです。
3.行動の般化は考えません
まずマッスルメモリーに入れてしまいます。般化はそれから。
4長く続けます
頭を使うのではなく、体を使うプログラムなので、失敗をせずに少し長く続けます。
5.疲れていても、眠くても行います
ただし成功し、それに見合うだけの報酬が無ければなりません。
6.特に大事なのは、行動に対して報酬を出さないこと
報酬は行動にではなくキューに反応したことに出します。
7.報酬は食べ物以外が良い
反復練習で意欲が低下しがちですが、できるだけ報酬は楽しく遊んであげることや、穏やかに撫でることなど、飼い主からの安心感をベースにします。
8.意欲を低下させずに反復練習する
コツが必要です。食べモノに依存せずにいかに意欲を下げないで練習を続けられるか。
もちろん嫌悪刺激がベースの強制的なものであってはなりません。
眠くても疲れていても、不安な状況でも大興奮のときでも、反射による行動はモーターパターン並みに確実性が増します。
そしてそれは食べ物ではなく、モーターパターンの内的報酬に次ぐ「絆(きずな)」という強力な報酬がベースになります。
食べ物が捕食本能ベースだとしたら、絆というのは危機回避本能がベースの「行動を強化する因子」であるわけです。
体が覚えてしまった行動。キューを聞いたら無意識に反応してしまう行動は、極端にいえば環境の般化が必要ありません。いつでもどこでも寝ていても起きていても、キューが耳に届いたら、体が反応してしまうからです。
ぜひ基本的な動き、いざというときに犬の命を守るキューはこのレベルまでトレーニングしましょう。
ただし、無意識になった行動の修正、ルール変更はきわめて難しくなります。
だから困った行動は、何よりも繰り返させないことが大事なんです。引っ張りでも無駄吠えでも、無意識になったらなかなか治せないから、意識してやっている間に食い止めることが最優先です。
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注) 上記の提案はあくまでも私の考えによるものです。科学的な情報をベースに組み立てていますが、絶対に正しいという保証はありませんのであしからず。
ノイと競技会に出ていたころは、モチベーショナルトレーニングといってもかなり「汗と根性と涙」でした。
疲れて思考力のなくなったノイに強力なごほうびをちらつかせ、毎日3時間くらい練習していたと思います。
ずいぶん効率の悪いトレーニングをしていました。それだけノイにも負担をかけていました。
せっかくだからもっと効率のよい科学的なトレーニングを考えてみましょう。

ではどんなトレーニングが科学的なのでしょうか?
もちろん一言では言いきれませんが、今日は脳の仕組みを踏まえた提案をさせていただきます。
まず新しい行動については、短時間集中で記憶のメカニズムを意識した教え方をします。
脳細胞は筋肉の6~7倍カロリーを消費し、犬はすぐに疲れてしまいますから、やる気があっても、体力があふれていても、新しいことを教えるには短時間集中であることがとても大事です。
この時のポイントは
1.失敗を経験させないこと
記憶の中に成功のイメージしか残さないためです。
2.時間をタイマーでちゃんと管理すること
人間は管理されないとつい長くやってしまうからです。
せいぜい5分で休憩を入れましょう。
休憩中に行動の記憶が整理されるように、しっかり休ませます。
3.一つの目安として失敗がなく3回連続してできるようになったら学習が始まっています
ただし失敗が1回入ればそこから20回成功を続けないと失敗の記憶が打ち消せません。
4.もちろん行動の上にキューまで乗せた状態です
最初は行動、そして連続して成功するようになったら割とすぐにキューを乗せます。
5.行動の般化はこの段階で行ってはいけません
まず行動そのものを覚えるのが先決だからです。
6.報酬をしっかり与えます
魅力のある報酬、特に食べ物を与えます。引き上げを考えてはいけません。ランダムなんてもってのほかです。
7.エピソード記憶を意識してください
印象的な事柄とセットだと学習はとても効率的になります。

さて、これで行動を覚えました。
これはどんな状態かというと、
・キューを聞いたらそれが何を意味するかを理解し行動に移す
という感じだと思います。
つまり言われたことを考えて正しく、かつ自分にメリットが発生する行動を実行している段階です。
これ、自動車教習所で習う「目で判断してからブレーキを踏み、実際に止まるまでの空走距離」で説明されているように、キューから実行までにかなりの時間を要します。
途中に思考回路が入っているからです。報酬への期待も伴います。
さて、そこからのトレーニングは、新しいことを教えるプログラムとは考え方が全く異なります。
一言でいえば思考回路をバイパスし、キューを聞いたら無意識に反応する、いわゆるマッスルメモリー(筋肉記憶)に教え込むプロセスになるのです。
反射の領域に行動を移行させます。
これは思考回路をショートカットするのでキューを聞いたら自動的に体が動いてしまう状態です。迷いも出にくくなります。キューから行動までの「空走時間」も大幅に短くなります。
報酬への期待は後回しになります。
その時のポイントは、
1.ズバリ、反復練習です
環境を整え、失敗せずに繰り返し繰り返し行います。
2.一番落ち着いてできる慣れた場所で行います
単に覚えたての行動を無意識の反射にしてしまうプロセスなので、余計な刺激が無いほどいいです。
3.行動の般化は考えません
まずマッスルメモリーに入れてしまいます。般化はそれから。
4長く続けます
頭を使うのではなく、体を使うプログラムなので、失敗をせずに少し長く続けます。
5.疲れていても、眠くても行います
ただし成功し、それに見合うだけの報酬が無ければなりません。
6.特に大事なのは、行動に対して報酬を出さないこと
報酬は行動にではなくキューに反応したことに出します。
7.報酬は食べ物以外が良い
反復練習で意欲が低下しがちですが、できるだけ報酬は楽しく遊んであげることや、穏やかに撫でることなど、飼い主からの安心感をベースにします。
8.意欲を低下させずに反復練習する
コツが必要です。食べモノに依存せずにいかに意欲を下げないで練習を続けられるか。
もちろん嫌悪刺激がベースの強制的なものであってはなりません。
眠くても疲れていても、不安な状況でも大興奮のときでも、反射による行動はモーターパターン並みに確実性が増します。
そしてそれは食べ物ではなく、モーターパターンの内的報酬に次ぐ「絆(きずな)」という強力な報酬がベースになります。
食べ物が捕食本能ベースだとしたら、絆というのは危機回避本能がベースの「行動を強化する因子」であるわけです。
体が覚えてしまった行動。キューを聞いたら無意識に反応してしまう行動は、極端にいえば環境の般化が必要ありません。いつでもどこでも寝ていても起きていても、キューが耳に届いたら、体が反応してしまうからです。
ぜひ基本的な動き、いざというときに犬の命を守るキューはこのレベルまでトレーニングしましょう。
ただし、無意識になった行動の修正、ルール変更はきわめて難しくなります。
だから困った行動は、何よりも繰り返させないことが大事なんです。引っ張りでも無駄吠えでも、無意識になったらなかなか治せないから、意識してやっている間に食い止めることが最優先です。
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注) 上記の提案はあくまでも私の考えによるものです。科学的な情報をベースに組み立てていますが、絶対に正しいという保証はありませんのであしからず。