エサで釣るとロクなことがない(誘導への警鐘)
ある意味、10年ほど前から「陽性強化」という呼び方のトレーニングを習ってきた方たちは、「誘導世代」と呼ぶべき独特なゾーンにいます。
オスワリと言いながら胸にこぶしを当てる方々をよく見かけますが、まさに「誘導世代」の特徴です。
おそらく相当苦労してこられたことと思います。
「誘導」は行動を引き出すための超強力なプロンプトです。
なぜ超強力なのかといえば、犬が何も考えずとも行動できるからです。
良くできたカーナビに従って車でどこかに行くのと同じ、あるいはそれ以上に楽でしょう。
プロンプトとして超強力なだけに、行動はすぐ引き出せるわけです。
でも、この「フードを使った誘導」、言い換えればエサで釣るトレーニングは極めてリスキーで、効率よく用いるには実はかなり高度な知識と判断力が必要なんです。
こういった強力なプロンプトを用いると犬がほとんど考えないので、そのままでは全然学習してくれません。
何度も何度も繰り返していくとやがては覚えてくれるんですが、その時には完全にそのプロンプトがキューになっているわけです。
手を大きく回して誘導するヒールポジションなんかが最たる例です。
だから本来プロンプトは引き揚げなくちゃならないんでが、もうキューになっていると引き揚げられないんですね。
それを避けるためには注意深く犬を観察し、わずか数回で誘導をやめるくらいのプログラムを実践しなければなりません。
わずか数回といっても、それが速すぎれば行動は消えますから、犬が「こんな感じかなぁ」と思い始めたところで巧みに抜いていくというメカニカルスキルも求められます。
誘導をちゃんと使おうとしたら実はとても難しいわけです。
だから初心者には勧められません。かなり勉強した人だけが上手に誘導というプロンプトを使いこなせるんだと思います。
また犬が緊張下にある場合、例えば知らない場所、知らない人たち、知らない犬といった刺激の中で、いつものキューが効かないからとすぐにフードによる誘導を行うケースも良く目にしますが、これも最悪の事態を招くことが多いです。
ただでさえ気持ちが高ぶり落着きを失っている状態で強力なフードを出したらどうなるか。
そのために冷静になれるのか、それともさらにエキサイティングな事態になってしまうのか。結果は明白です。
犬はまともに考えることもできなくなってただ吠え続ける。あるいは極度に落着きを失い、ヒステリックに動き回ったかと思えば必死でフードを食べようとするなど、めちゃくちゃな行動になっていきがちです。
バリアフラストレーションという言葉があります。動きを束縛される際に起きる葛藤です。ケージの中でも起きるし、部屋の隅に追い詰めてもそうなります。リードを張った状態ではかなりバリアフラストレーションを犬に与えてしまいます。
そしてそんな状況下でのフードによる誘導は、それに近い「拘束されるフラストレーション」を受けてしまうんですね。
仮に何かを学習したとしてもエサに釣られているわけですから、人との絆とは程遠い状態です。逆に言えば誰のエサにも釣られるでしょう。
そしてエサがなければ何もやらない、というのも当たり前です。フードを持つ手がキューになっているのだから、犬にとっては「エサがない」 = 「キューが出ていない」に等しいわけです。
学習は遅れ、正しいキューは伝わらず、慣れない環境では余裕を失ってしまう・・・
まさにエサで釣るとロクなことがありません。
もちろん私もフードによる誘導を用いる場合があります。それは主に【管理のテクニック】としてであり、リードで管理することと同じ目的においてです。
リードさばきと同様にフラストレーションには注意しなければなりません。
一方タレント犬トレーニングなどでは、手っ取り早く行動を教えるために誘導とクリッカーと声掛けなどを同時に行う場合があります。
プロンプトだらけにします。
この場合はかなり犬に集中し、いつどのプロンプトを引き上げるか、あるいはどのプロンプトをキューとして残すか、どのプロンプトをすり替えていって新たなキューにつなげるかなどを考えながら、1分間とて同じメニューを繰り返えさないような、いわば刻一刻と変化していくバリアブルトレーニングをしてくわけです。
だからこそタレント犬トレーニングは面白いともいえます。
また普段のトレーニングでも、「エサで釣る」ことは避けますが、だからと言ってフードを使わないわけではありません。むしろフードは多用します。
それは「報酬として」です。
報酬ですから後出しです。
これは決してキューになりません。
もちろんプロンプトにもなりません。
厳密には準備の段階で犬がそれを察しトレーニングモードになる可能性はあります。
しかし、ここでテーマとなっているのは新しい行動を形作ることですから、フードが具体的な行動のプロンプトになっていない限り弊害はありません。
むしろこれから何かが始まる期待感を持たせることができるでしょう。
こういった理屈は説明を聞けばなるほどと思ってもらえるのですが、誘導のトレーニングは簡単で分かりやすいので、ついついやってしまいがちな罠であるともいえます。
クリッカーが素晴らしいのは、そういう罠から遠ざかれること。
誘導に毒されずに犬のトレーニングができることにあります。
これからしつけを学ぼうとしている方がいらっしゃったら、ぜひ誘導は後回しにして犬の自発性を引き出すトレーニングから始めてください。
オスワリやフセ、オイデなどは誘導よりクリッカーのほうがずっと簡単に教えられます。
失敗もなく、犬も楽しく学べます。
まずクリッカーを学んでください。
そして原理を理解できたら報酬によるトレーニング全般に広げていきましょう。
誘導テクニックは管理の手法として後で学びましょう。
さらに「新しいことを教える」ことと「教えたことをいつでも実行してもらう」トレーニングの違いを認識し、これらを上手に使い分けていただければ、現在考えうる最も効率的な模範的トレーニングになると思います。
犬は忍耐強いから、私たちのわかりにくくて遠回りなトレーニングにも付き合ってくれますが、人道的かどうかといわれれば、余分なストレスをかけているわけですから、誘導はあまりほめられたものではありません。
キャシー・スダオは「誘導は強制訓練だ」と言い切っています。
その言葉、科学的なトレーニングを目指すものなら、重く受け止めようではありませんか。
オスワリと言いながら胸にこぶしを当てる方々をよく見かけますが、まさに「誘導世代」の特徴です。
おそらく相当苦労してこられたことと思います。
「誘導」は行動を引き出すための超強力なプロンプトです。
なぜ超強力なのかといえば、犬が何も考えずとも行動できるからです。
良くできたカーナビに従って車でどこかに行くのと同じ、あるいはそれ以上に楽でしょう。
プロンプトとして超強力なだけに、行動はすぐ引き出せるわけです。
でも、この「フードを使った誘導」、言い換えればエサで釣るトレーニングは極めてリスキーで、効率よく用いるには実はかなり高度な知識と判断力が必要なんです。
こういった強力なプロンプトを用いると犬がほとんど考えないので、そのままでは全然学習してくれません。
何度も何度も繰り返していくとやがては覚えてくれるんですが、その時には完全にそのプロンプトがキューになっているわけです。
手を大きく回して誘導するヒールポジションなんかが最たる例です。
だから本来プロンプトは引き揚げなくちゃならないんでが、もうキューになっていると引き揚げられないんですね。
それを避けるためには注意深く犬を観察し、わずか数回で誘導をやめるくらいのプログラムを実践しなければなりません。
わずか数回といっても、それが速すぎれば行動は消えますから、犬が「こんな感じかなぁ」と思い始めたところで巧みに抜いていくというメカニカルスキルも求められます。
誘導をちゃんと使おうとしたら実はとても難しいわけです。
だから初心者には勧められません。かなり勉強した人だけが上手に誘導というプロンプトを使いこなせるんだと思います。
また犬が緊張下にある場合、例えば知らない場所、知らない人たち、知らない犬といった刺激の中で、いつものキューが効かないからとすぐにフードによる誘導を行うケースも良く目にしますが、これも最悪の事態を招くことが多いです。
ただでさえ気持ちが高ぶり落着きを失っている状態で強力なフードを出したらどうなるか。
そのために冷静になれるのか、それともさらにエキサイティングな事態になってしまうのか。結果は明白です。
犬はまともに考えることもできなくなってただ吠え続ける。あるいは極度に落着きを失い、ヒステリックに動き回ったかと思えば必死でフードを食べようとするなど、めちゃくちゃな行動になっていきがちです。
バリアフラストレーションという言葉があります。動きを束縛される際に起きる葛藤です。ケージの中でも起きるし、部屋の隅に追い詰めてもそうなります。リードを張った状態ではかなりバリアフラストレーションを犬に与えてしまいます。
そしてそんな状況下でのフードによる誘導は、それに近い「拘束されるフラストレーション」を受けてしまうんですね。
仮に何かを学習したとしてもエサに釣られているわけですから、人との絆とは程遠い状態です。逆に言えば誰のエサにも釣られるでしょう。
そしてエサがなければ何もやらない、というのも当たり前です。フードを持つ手がキューになっているのだから、犬にとっては「エサがない」 = 「キューが出ていない」に等しいわけです。
学習は遅れ、正しいキューは伝わらず、慣れない環境では余裕を失ってしまう・・・
まさにエサで釣るとロクなことがありません。
もちろん私もフードによる誘導を用いる場合があります。それは主に【管理のテクニック】としてであり、リードで管理することと同じ目的においてです。
リードさばきと同様にフラストレーションには注意しなければなりません。
一方タレント犬トレーニングなどでは、手っ取り早く行動を教えるために誘導とクリッカーと声掛けなどを同時に行う場合があります。
プロンプトだらけにします。
この場合はかなり犬に集中し、いつどのプロンプトを引き上げるか、あるいはどのプロンプトをキューとして残すか、どのプロンプトをすり替えていって新たなキューにつなげるかなどを考えながら、1分間とて同じメニューを繰り返えさないような、いわば刻一刻と変化していくバリアブルトレーニングをしてくわけです。
だからこそタレント犬トレーニングは面白いともいえます。
また普段のトレーニングでも、「エサで釣る」ことは避けますが、だからと言ってフードを使わないわけではありません。むしろフードは多用します。
それは「報酬として」です。
報酬ですから後出しです。
これは決してキューになりません。
もちろんプロンプトにもなりません。
厳密には準備の段階で犬がそれを察しトレーニングモードになる可能性はあります。
しかし、ここでテーマとなっているのは新しい行動を形作ることですから、フードが具体的な行動のプロンプトになっていない限り弊害はありません。
むしろこれから何かが始まる期待感を持たせることができるでしょう。
こういった理屈は説明を聞けばなるほどと思ってもらえるのですが、誘導のトレーニングは簡単で分かりやすいので、ついついやってしまいがちな罠であるともいえます。
クリッカーが素晴らしいのは、そういう罠から遠ざかれること。
誘導に毒されずに犬のトレーニングができることにあります。
これからしつけを学ぼうとしている方がいらっしゃったら、ぜひ誘導は後回しにして犬の自発性を引き出すトレーニングから始めてください。
オスワリやフセ、オイデなどは誘導よりクリッカーのほうがずっと簡単に教えられます。
失敗もなく、犬も楽しく学べます。
まずクリッカーを学んでください。
そして原理を理解できたら報酬によるトレーニング全般に広げていきましょう。
誘導テクニックは管理の手法として後で学びましょう。
さらに「新しいことを教える」ことと「教えたことをいつでも実行してもらう」トレーニングの違いを認識し、これらを上手に使い分けていただければ、現在考えうる最も効率的な模範的トレーニングになると思います。
犬は忍耐強いから、私たちのわかりにくくて遠回りなトレーニングにも付き合ってくれますが、人道的かどうかといわれれば、余分なストレスをかけているわけですから、誘導はあまりほめられたものではありません。
キャシー・スダオは「誘導は強制訓練だ」と言い切っています。
その言葉、科学的なトレーニングを目指すものなら、重く受け止めようではありませんか。