求めるものは「行動」なのか「状態」なのか
犬に行動を教える場合、行動分析学の理論がとても役に立つ。
クリッカートレーニングはその最たるもの。行動にクリッカーが鳴り(二次強化子)、直後に食べもの(一次強化子)が出ることによって、犬はその行動を学習する。
行動を教えるには最もわかりやすく、強力かつシンプルなトレーニング法だ。

(Bamboo Clicker)
ところが普段の犬との暮らし、つまりハウスマナーの中ではなかなか期待した通りの実用性を発揮できないことがある。それはどんなケースか。
たとえばオスワリといえば一瞬オスワリしてくれるが、すぐに立ち上がってしまう。
自分からハウスには入るのだがそこにとどまってはくれない、などなど。

実は行動分析学をベースにした学習(オペラント学習)には大きな落とし穴があるのだ。それは「行動とは何か」という行動分析学における、そもそもの定義と密接に関連している。
行動分析学における「行動」の定義にはいくつものお約束があるが、簡単に言ってしまえば、物理的に動きがあることが大原則になる。
行動という言葉に概念的に含まれる「ふるまい」とか「行い」といったニュアンスは入らないのだ。
また「〇〇しない」といった否定系の文章は、いっさい行動分析学の対象にならない。もちろん「良い子にしていて」という抽象的な表現もだめだ。
これが日常生活における犬とのルール作りに大いに影響する。
意外だと思われるかもしれないが、ハウスマナーにおいては行動分析学におけるところの「行動」を犬に教える必要がほとんどないからだ。

たとえば解りやすくオスワリを例にとってみよう。
「オスワリは行動である」と簡単に決めつけてはいけない。「座ること」は行動だが「座っていること」は行動ではない。座るという行動がなければ座っているという状態にはなれないから、オスワリには常に行動が伴う。しかしハウスマナーとして私たちが犬に教えたい「オスワリ」は、座るという行動ではなく実は「座っている状態」なのだ。

犬に一瞬だけお尻を地面につける「オスワリ行動」を求めている人はおそらくいないと思う。「オスワリ」と言ったら、座った状態でその姿勢を維持してもらいたいはずだ。つまり要求しているのは行動ではなく状態。しかしその状態になるためには行動が必要だから、「オスワリ」というリクエストに対して犬がお尻を下げる動作をする。そこが誤解を生む元になっている。
それではオスワリを犬に教える場合、具体的には犬に何を伝えるべきなんだろう?後ろ脚の力をお尻が地面に到達するまで徐々に緩めて行くことか?それとも完成形のオスワリの形なんだろうか?完成形(ゴール)がわかれば、犬にはどうすればその形になれるか、どんな行動をすればよいのか解るのではないだろうか?
たとえばオイデ。離れた場所から「オイデ」という声を聞いたら飼い主のもとまで来てオスワリをする。いわゆる正面停座だ。これはいくらなんでも行動だろう、とよく言われる。確かに飼い主の前でオスワリするところまでは全部行動である。しかし私たちがオイデと言って犬に求めているのは、正面でオスワリしているという結果だ。結果に至るまでの行動は犬の知能を持ってすれば自分で判断できることだから、極論を言うとわざわざ教えなくても良いのではないか。だってオイデと言われたらまず左前脚から順番に四つの脚をバランスを取りながら動かす・・・・なんてことを教える人はさすがいないだろう。それは犬に任せておけばいいから。それとおんなじなんだ。最終的に何を求めているのかをちゃんと犬に伝えれば、それに必要な行動を犬は自分で考え実行できると考えたい。

ハウスマナーで代表的なキューであるオスワリ、フセ、タッテ、オイデ、ハウス、マットなどはすべて行動を伴うが、求めている最終形は状態。犬が最終形を理解すれば私たちが教える必要のある行動はほとんどない。
さらに言えばヒールポジションで歩く「ツイテ」だって、私たちが最終的に求めているのは「横を歩くこと」ではなく、犬の顔が常にたとえば左ひざの10cmよこにあり続けること、という部分的な「状態」だったりする。
そうやって教えないとフリースタイルなどの、ハンドラーが縦横無尽に歩く種目では犬がうまく理想の位置をキープできない。
行動として教えてしまった「ツイテ」なら、そのキューを発した途端、例え人が動かずにいても犬は前に歩き出してしまうはずだ。
なのでこれらのハウスマナーに行動分析学の理論を用いる場合は、それがより短時間で最終形の状態に導くためのヒントと捉え、最終形は行動ではなく状態であるということを理解していることが犬にわかりやすいトレーニングにおいては大切なのだ。
クリッカートレーニングはその最たるもの。行動にクリッカーが鳴り(二次強化子)、直後に食べもの(一次強化子)が出ることによって、犬はその行動を学習する。
行動を教えるには最もわかりやすく、強力かつシンプルなトレーニング法だ。

(Bamboo Clicker)
ところが普段の犬との暮らし、つまりハウスマナーの中ではなかなか期待した通りの実用性を発揮できないことがある。それはどんなケースか。
たとえばオスワリといえば一瞬オスワリしてくれるが、すぐに立ち上がってしまう。
自分からハウスには入るのだがそこにとどまってはくれない、などなど。

実は行動分析学をベースにした学習(オペラント学習)には大きな落とし穴があるのだ。それは「行動とは何か」という行動分析学における、そもそもの定義と密接に関連している。
行動分析学における「行動」の定義にはいくつものお約束があるが、簡単に言ってしまえば、物理的に動きがあることが大原則になる。
行動という言葉に概念的に含まれる「ふるまい」とか「行い」といったニュアンスは入らないのだ。
また「〇〇しない」といった否定系の文章は、いっさい行動分析学の対象にならない。もちろん「良い子にしていて」という抽象的な表現もだめだ。
これが日常生活における犬とのルール作りに大いに影響する。
意外だと思われるかもしれないが、ハウスマナーにおいては行動分析学におけるところの「行動」を犬に教える必要がほとんどないからだ。

たとえば解りやすくオスワリを例にとってみよう。
「オスワリは行動である」と簡単に決めつけてはいけない。「座ること」は行動だが「座っていること」は行動ではない。座るという行動がなければ座っているという状態にはなれないから、オスワリには常に行動が伴う。しかしハウスマナーとして私たちが犬に教えたい「オスワリ」は、座るという行動ではなく実は「座っている状態」なのだ。

犬に一瞬だけお尻を地面につける「オスワリ行動」を求めている人はおそらくいないと思う。「オスワリ」と言ったら、座った状態でその姿勢を維持してもらいたいはずだ。つまり要求しているのは行動ではなく状態。しかしその状態になるためには行動が必要だから、「オスワリ」というリクエストに対して犬がお尻を下げる動作をする。そこが誤解を生む元になっている。
それではオスワリを犬に教える場合、具体的には犬に何を伝えるべきなんだろう?後ろ脚の力をお尻が地面に到達するまで徐々に緩めて行くことか?それとも完成形のオスワリの形なんだろうか?完成形(ゴール)がわかれば、犬にはどうすればその形になれるか、どんな行動をすればよいのか解るのではないだろうか?
たとえばオイデ。離れた場所から「オイデ」という声を聞いたら飼い主のもとまで来てオスワリをする。いわゆる正面停座だ。これはいくらなんでも行動だろう、とよく言われる。確かに飼い主の前でオスワリするところまでは全部行動である。しかし私たちがオイデと言って犬に求めているのは、正面でオスワリしているという結果だ。結果に至るまでの行動は犬の知能を持ってすれば自分で判断できることだから、極論を言うとわざわざ教えなくても良いのではないか。だってオイデと言われたらまず左前脚から順番に四つの脚をバランスを取りながら動かす・・・・なんてことを教える人はさすがいないだろう。それは犬に任せておけばいいから。それとおんなじなんだ。最終的に何を求めているのかをちゃんと犬に伝えれば、それに必要な行動を犬は自分で考え実行できると考えたい。

ハウスマナーで代表的なキューであるオスワリ、フセ、タッテ、オイデ、ハウス、マットなどはすべて行動を伴うが、求めている最終形は状態。犬が最終形を理解すれば私たちが教える必要のある行動はほとんどない。
さらに言えばヒールポジションで歩く「ツイテ」だって、私たちが最終的に求めているのは「横を歩くこと」ではなく、犬の顔が常にたとえば左ひざの10cmよこにあり続けること、という部分的な「状態」だったりする。
そうやって教えないとフリースタイルなどの、ハンドラーが縦横無尽に歩く種目では犬がうまく理想の位置をキープできない。
行動として教えてしまった「ツイテ」なら、そのキューを発した途端、例え人が動かずにいても犬は前に歩き出してしまうはずだ。
なのでこれらのハウスマナーに行動分析学の理論を用いる場合は、それがより短時間で最終形の状態に導くためのヒントと捉え、最終形は行動ではなく状態であるということを理解していることが犬にわかりやすいトレーニングにおいては大切なのだ。