16週齢が過ぎて
脳細胞(ニューロン)を結ぶシナプスは、生誕後に一度猛烈に増加するそうです。そして犬の臨界期とも言われる16週齢までに不要と判断されたシナプスが無くなっていくプロセスを経て、落ち着いていくそうですが、それまでにはかなりの数が減っててしまいます。
16週齢までの刺激によってシナプスは増加するのではなく、消えていく数が変わるのですね。つまりその間に不要と判断されたシナプスが無くなっていくわけです。
かつて人間の子供で幼いうちにものもらいなどを患い、しばらく眼帯などをしていた子はそちらの視力が育たないという問題が起こったそうです。その原因として臨界期に眼帯をしていた方の目の、情報を伝達するシナプスが不要と判断されたために起きることが解ったわけです。ですから今は大切な臨界期に眼帯などをする治療はしないんだそうです。
これはとても大事な情報で、たとえば小犬が怪我をしたり病気になっても、16週齢までに欠かせない刺激が得られない環境においてはイケナイということがここから解ります。
ワクチンの抗体が出来るまでは段ボールから出さない、などは論外なんですね。
さて、ルフトはその辺も意識して様々な刺激を与えてきましたが、どうしても不足している部分があるのは否めません。たとえば人混み。たとえば15週齢までに体験できない気候。その辺はやむを得ないと思っています。そういった判断を司るシナプスはつながっていないかも知れません。でもまだまだ臨界期が完全に閉じたわけではないので、これからも意識して適切な刺激は与えていきたいと思います。
よく英才教育とか、早期の児童教育が人間の世界でも話題になりますが、基本的に臨界期の教育は主に脳を育てるためであり、何か高度なことを覚えさせたりするのには不適切だそうです。仮に教えても忘れてしまうだけではなく、将来の学習意欲をそぐことにもなりかねません。
ですから刺激は与えますが勉強はさせないという感じが良いのではないでしょうか。
そんなわけで、ルフトにいろんな事を教えるのはこれからになります。
ちなみに「覚える」というプロセスは人間の場合(そしておそらく犬も)大まかに4段階に分かれるのだそうです。
最初が感覚記憶。これは1秒くらいしか持たない記憶で、そこからステップを経て最終的には長期記憶といわれる記憶になり、これがトレーニングの世界で言われる「マッスルメモリー」、つまり筋肉記憶になるわけです。犬が長期記憶の情報を元に反射的に行動する状態です。
それではどうやって感覚記憶から長期記憶にまで移行していくのかというと、それは繰り返し与えられる刺激によるのと、それから脳がこれは必要な情報だと判断して、寝ている間に繰り返し繰り返しその情報を思い出させるからだとか。
ということはお勉強の後の睡眠は非常に重要なんですね。もしかしたら、新しいことを教えた際には、すぐに寝かせると良いのかも。